寝る前の一話

夜眠る前に読むと心がほっこりするような短編を書くつもりです。

7話 キャプテン・ジョニー

朝、目が覚めると私の横でキャプテン・ジョニーが寝ていた。キャプテンはヨダレを垂らしながらふがふが言っている。ゆっくりと体を起こし、枕にヨダレの跡がしっかりついているのを確認した私は、思いっきりキャプテンを蹴飛ばした。

 

「お?おおおおお!お?」

 

キャプテンは瞼の開かない目でキョロキョロと周りを見渡した。しかし、目が開いていないので私を見つけられない。なので私はもう一発蹴りをかました。

 

「なにがなにやら」

 

キャプテンは私が用意したコーヒーをガブガブ飲みながら首を傾げた。もう4杯目である。とはいえ、私にとっても不可解な事態に直面していることには相違なかった。私はこのおっさんを知っている。会ったことはないが知っている。今目の前にいるコーヒーガブ飲み男は、昨日私が読んだ本に出てくる主人公なのである。

 

「それで、私はこれから悪の帝王ギロチン博士をぶっ殺しにいかねばならんのだが、トレビアン王国はどちらかね?」

 

キャプテンは5杯目のコーヒーを催促しながら私に尋ねた。

 

「あっちじゃないかしら」

 

私はコーヒーポットを片手に適当な方角を指差した。キャプテンは私の指差した方角を見て手を合わせ、「世話になったな!」と威勢よく窓から飛び出していった。さすがヒーロー。23階の窓からでも躊躇なく飛んでいくんだ。そう思って感心していると、数秒後に下の方から何か重いものが落ちた物音と悲鳴が聞こえてきた。

 

「ふぅ、今日の運勢はどうかな」

 

私はようやく訪れた静寂に感謝しながらTVをつけ、星座占いで自分の星座の番が来るのを待った。今日はなんだか変な朝だ。遠くから救急車のサイレンが近づいてくる。ふとあの図書館で借りた本に目をやる。キャプテンがギロチン博士をやっつけに行くシーンが開かれている。私は本をそっと閉じた。

 

「今日の最下位は水瓶座のあなたです!」

 

TV画面では変な顔のタヌキがこちらを指差して笑っている。私は重症患者の延命装置を切らんとする悪徳ドクターを演じながら、TVの電源を乱暴に切った。