寝る前の一話

夜眠る前に読むと心がほっこりするような短編を書くつもりです。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

3話 物理が崩壊している図書館

「物理が崩壊している図書館」 外観の割に中はとても広かった。玄関に入ると目の前は大きなホールになっていて、中央には2mほどの中世と思われる格好をした男の彫刻が鎮座している。その両脇からは階段が伸びていて二階へと続いている。床はバロック調のデ…

2話 自分のことをチンと呼ぶ猫

「自分のことをチンと呼ぶ猫」 ゆっくりとドアが音を立てて開いた。隙間から2つの青い瞳がこちらを覗いている。なんだかおかしい、と私は思った。なぜなら、目の位置が異様に低いからだ。私の膝くらいしかない。そしてなにより、その縦長に筋の入った瞳は猫…

1話 土砂降りの日にしか現れない図書館

5/25「土砂降りの日にしか現れない図書館」 私の街のはずれには、土砂降りの日にしか姿を現さない図書館がある。土砂降りというのは本当にその言葉の通りで、傘をさしていてもまるで海に飛び込んだように体がずぶ濡れになるような雨のことだ。この街にはずぶ…