寝る前の一話

夜眠る前に読むと心がほっこりするような短編を書くつもりです。

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

10話 キャプテンのときめき

幸いにもマッスル飯田は生きていた。あの後すぐに救急車で運ばれていったそうだが、信じられないことにあれだけ吹き飛んだ彼はかすり傷で済んだそうだ。その証拠にマッスル飯田は今日も女子たちの黄色い歓声を背にサッカーの練習に打ち込んでいる。その様子…

9話 マッスル飯田

彼は意外と聞き上手だった。 キャプテンの発する無言の圧力に耐えかねた私は、しぶしぶ悩みを打ち明けた。とはいってもある程度自分の中で処理できているレベルのものだけど。とくに理由があるわけではないけど、なんとなくキャプテンが私の世界に干渉するの…

8話 1日1ヒーロー

キャプテンはひどく不服そうな面持ちでコーヒーカップを手に持っている。私は無言でそのカップにコーヒーを注ぐ。キャプテンもまた無言でそのコーヒーをすする。 窓から飛び出していったあと、しばらくしてキャプテンは私の部屋に戻ってきた。星座占いを見終…

7話 キャプテン・ジョニー

朝、目が覚めると私の横でキャプテン・ジョニーが寝ていた。キャプテンはヨダレを垂らしながらふがふが言っている。ゆっくりと体を起こし、枕にヨダレの跡がしっかりついているのを確認した私は、思いっきりキャプテンを蹴飛ばした。 「お?おおおおお!お?…

6話 猫との約束

結局、チンの言葉の意味はわからずじまいだったが、とりあえず一冊だけ本を借りてきてしまった。はあ、とため息をつく。今日はいろいろ疲れた。衝撃の失恋に続き、さらには追い撃ちをかけるように不可解な図書館に迷い込んだ。だが、ため息の原因はそれだけ…

5話 不思議な図書館の不思議な本

チンはどれでもいいから一冊借りていいよと言ってくれた。私はぐるりと本棚を見渡して息を呑んだ。どれも古めかしく、一冊一冊が何かの芸術品のようだ。普段本を読まないこともあり、手を伸ばすのをためらう。 「そんなに深く考えなくていいよ。ぱっと目に入…

4話 チンの飼い主

「こんな立派な図書館、一体誰が作ったの?」 私は頭に浮かんだ疑問をそのまま猫に尋ねた。 「チンの飼い主だよ」 猫は前足を舌で舐めながら答えた。 「え、でもここは大昔に作られたって言ってなかった?」 「うん、作られたのは大昔だ。おそらく300年は経…