寝る前の一話

夜眠る前に読むと心がほっこりするような短編を書くつもりです。

4話 チンの飼い主

「こんな立派な図書館、一体誰が作ったの?」

 

私は頭に浮かんだ疑問をそのまま猫に尋ねた。

 

「チンの飼い主だよ」

 

猫は前足を舌で舐めながら答えた。

 

「え、でもここは大昔に作られたって言ってなかった?」

「うん、作られたのは大昔だ。おそらく300年は経っているだろうね」

 

私は訝しそうに猫を見つめた。

 

「なら、君の飼い主は300歳ってわけ?」

「そうなるね」

「私をからかってるの?」

「いいや、嘘じゃないさ。ただ、今も生きていたらね」

 

猫はまるで飼い主が今も生きている可能性があるように話した。300歳だって?ありえない。死んでるに決まってる。私はそう思って猫に言おうとしたが、自分の腕の中で無邪気に毛づくろいをしている姿をみて言葉を飲み込んだ。

 

「それで」と猫は言った。「傘は貸してあげるし、服も好きなだけ乾かしていっていい。せっかくだから本も一冊借りていくかい?」

 

私は目の前に広がる本の海に圧倒されながら、ゆっくりと頷いた。