寝る前の一話

夜眠る前に読むと心がほっこりするような短編を書くつもりです。

5話 不思議な図書館の不思議な本

チンはどれでもいいから一冊借りていいよと言ってくれた。私はぐるりと本棚を見渡して息を呑んだ。どれも古めかしく、一冊一冊が何かの芸術品のようだ。普段本を読まないこともあり、手を伸ばすのをためらう。

 

「そんなに深く考えなくていいよ。ぱっと目に入ったものを手に取るといい」

 

チンの言葉に私は頷き、なんとなく気になっていた一階左脇に並んでいるエメラルド色の本を手にとった。その瞬間、視界がぐるぐると回って危うく倒れそうになった。

 

「ああ、そうそう。ここの本は特別なんだ」

「特別?」

「本というか、図書館さ。この図書館には不思議な力がある。それは人を幸福にも不幸にもするかもしれない。いわゆる魔法のようなものさ」

「魔法ですって?今君が人の言葉を話しているみたいに?」

「まぁ、ある意味ではね。とにかく、お前は今日この図書館のドアをくぐったときから、もうひとつ別のドアをくぐったのさ」

「なにそれ、全然意味がわからないわ」

 

猫は私の顔を愉快そうに見つめて笑った。

 

「そのうち分かるよ」